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『コワすぎ!』 白石晃士監督を楽しむ3つのポイント

モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)・ホラーの二大巨頭といえば『放送禁止』の長江俊和監督、『ノロイ』『オカルト』の白石晃士監督であろう。

長江監督の良さがトリック・テクニックであるとすれば、白石監督の良さは不気味さにある。

その白石監督が待望の新作モキュメンタリー・ホラーを撮ってくれた!


『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦』

http://www.albatros-film.com/title.phtml?route=&titleid=1206

DVD作品ということで若干の不安はあったが、「ノロイ」「オカルト」から不気味さのクオリティは保ったままだ。

白石監督作品の面白さは強烈なキャラクターだったり色々あると思うが、ここでは3つのポイントにまとめてみた。

現実と非現実の曖昧さ

モキュメンタリー・ホラーは現実と非現実の繋げ方にあると思う。口裂け女を捕獲するという突拍子もない話なのだが、検証映像でじわじわ盛り上げて、ホームレスが恐怖への引き込み役になる。そこが実に上手い。口裂け女が本物なのか、それとも頭のおかしな女なのか判らないのも恐怖心を煽る。現実に起こりそうな事件、それがいつの間にか非現実なものにすり替わっている。

『オカルト』では俳優・宇野祥平さんがワーキング・プアでありネットカフェ難民の青年「江野祥平」を演じ、オカルト的な恐怖と社会的な恐怖を融合させ、ホラー映画の新しい広がりを感じさせた。

日常に存在するがあまり目に付かないもの、目に付けたくないものに恐怖の入り口はあるのだろう。

説明のない不気味さ

今回は特に目立って見られたが、必要以上の説明をしないことだ。

人によっては、え?結局どういうことなの?ということにもなりかねない。けれど「不気味さ」を想像させるための謎は残しておく。誰もいない真っ暗な部屋から気配を感じるみたいに、不気味さはいつも自分の頭が作り出す。そういう人間の根源的な恐怖を思い出させる手伝いを白石監督はしていると感じる。

怪談のような、どこか美しくて甘美なものではない。どんよりとじめじめした恐怖。その不気味さが好きだ。

観察者であり共犯者になる

『オカルト』以降の作品によく見られる手法だが、白石監督が白石監督本人役で出演しドキュメンタリーを撮っていき、観察者に留まらず事件に関与していく。(この手法は1992年のベルギー産モキュメンタリー映画『ありふれた狂気』に影響を受けているようだ)そして、監督が毎回ひどい目に合わされるのを期待してしまう。

視聴者は、共犯者にもなれるし、遠くから嘲笑することもできる。

今回は、白石監督作品ではお馴染みの大迫茂生さんがディレクターを演じている。この方の暴力シーンやにじみ出る雰囲気が不気味で実に良い。そしてやはり単なる観察者ではない。

残念ながら今回は監督出演なしかと思っていたが、エンドロールを見たら顔の出ないカメラマン役で出演されていて笑った。声で気付くべきだった。我々は試されているのかもしれない。


それにちょい役で『へんげ』(http://hen-ge.com/)の大畑創監督、『くそガキの告白』(http://kuso-gaki.com/)の鈴木太一監督も出演されており、ファンとしては交友関係が見られて、それぞれの監督にも興味が湧いてくるのが嬉しい。


以上が白石晃士監督を楽しむ3つのポイントである。
そしてこの作品、FILE-01とあるようにシリーズものになっている。
第二弾は、2012年8月3日発売開始。是非ともFILE-02 震える幽霊にも期待したい。
http://www.albatros-film.com/title.phtml?route=&titleid=1220